2009年03月
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6月 離れて歩くずぶ濡れ相合傘。 (5)
2009.03.30 Mon
「むっちゃん、お願いだから指だけは切らないで…」
「分かってるって!」
これでケガでもされた日には、目も当てられない。
翔真が心配するのも構わず、睦月は大胆な包丁さばきで、野菜を刻んでいく。すでに何切りなのかは分からない。
「これでいい? これでいい?」
「あー……うん。まぁ、……うん。切れてるね…」
よく分からないけれど、野菜は原形を留めないくらいには切り刻まれてはいるし、睦月はものすごい満足そうな顔をしているし、とりあえずいいことにする。
「ショウちゃん、彼女にもご飯作ってあげんの?」
後は炒めるだけだから、と言われ、けれどそばを離れることも出来なくて、睦月は翔真にくっ付いたまま、料理している姿を眺めている。
ちょっとやりづらい…とは思うが、仕方がない、睦月の好きなようにさせておく。
「作ることもあるよ。でもやっぱ彼女のほうが上手かな?」
「ふぅん。じゃあ俺もショウちゃん見習って、料理がんばったほうがいいかな?」
「うーん…どうかなぁ」
「でも今、結構がんばったよね!?」
……うん。
こっちのヒヤヒヤ度は半端なかったけどね。
「出来たよー」
「やった。あ、お皿? 出す?」
「あと、箸とか」
そこ入ってるから出して、と言えば、睦月は危なっかしい手付きで、皿やら箸を取り出している。
それだけでこの有様だ。
料理なんて、出来るはずもない。
「うひゃ。いただきまーす。あ、これ、何かすごい形!」
「それ切ったの、むっちゃんだからね」
自分で刻んだ野菜を不器用な箸遣いでつまみ上げ、睦月が笑いながら翔真に見せてくれるが、確かに野菜はすごい形だし、笑っている場合でもない気がする。
「でもおいしいよ。ショウちゃん、すごい!」
「ありがと。でもさ、亮だって、毎日この時間にウチにいるわけじゃないでしょ? 1人のとき、どうしてんの?」
「亮が作っておいてくれたヤツあっためるか、コンビニで買って来るか、ゆっち!」
「え?」
「ゆっちに作ってもらってた。でも今そうするとカズちゃんが怒るから、やめたけど…」
そこに、"自分で作る"という選択肢の入る余地がまったくないところが、睦月らしいといえば、睦月らしい。
「でもね、俺、あっためるくらいは出来るんだよ!」
「え? いや、むっちゃん、だってそれって、レンジにかけるだけでしょ?」
「何分とかさぁ、ちゃんと出来るの」
「あー…そっかぁ、ちゃんと出来るのかぁ」
だから、その"ちゃんと"て何?
自動とか、そんなボタンを押せば、ちょうどいいタイミングで温められるんじゃないの!?
翔真の心の中の突っ込みなど当然気付くはずのない睦月は、おいしそうに頬張っているし、すごく満足そうだから、あえてそれは口に出さないことにした。
「蒼ちゃん、帰って来ないねー」
睦月はクッションの上に、コロリと転がった。
2人が食事を終えて、睦月が出来もしない後片付けを何とか手伝い終えても、同室の蒼一郎はまだ帰って来なかった。聞かなかったけれど、出掛けるときのあの浮かれ具合からして、おそらく郁雅のところへ行ったのだろう。
「ショウちゃーん」
「ん?」
「蒼ちゃん帰って来るまで、ここにいていーい?」
「好きなだけどうぞー。てか、むっちゃん、眠いの?」
「んーん…」
そんなことはないと睦月は首を振るけれど、その目は明らかに眠そうになっている。
よく考えたら、今日は絶叫マシンに15回も乗ったのだ。いくら好きでも、体は疲れるに決まっている。
「その体勢、首痛くない?」
「んー…」
お腹の満たされた疲れた体は、新たな欲求に忠実に従って、寝るには明らかに不向きな体勢にも係わらず、ウトウトと睦月を夢の世界に誘っていく。
「俺、風呂入りに行きたいんだけどなー……て、絶対聞いてないよね」
つい今さっきまで、おぼろげな返事を返していた睦月だったが、とうとうその返事は寝息へと変わっていた。
「分かってるって!」
これでケガでもされた日には、目も当てられない。
翔真が心配するのも構わず、睦月は大胆な包丁さばきで、野菜を刻んでいく。すでに何切りなのかは分からない。
「これでいい? これでいい?」
「あー……うん。まぁ、……うん。切れてるね…」
よく分からないけれど、野菜は原形を留めないくらいには切り刻まれてはいるし、睦月はものすごい満足そうな顔をしているし、とりあえずいいことにする。
「ショウちゃん、彼女にもご飯作ってあげんの?」
後は炒めるだけだから、と言われ、けれどそばを離れることも出来なくて、睦月は翔真にくっ付いたまま、料理している姿を眺めている。
ちょっとやりづらい…とは思うが、仕方がない、睦月の好きなようにさせておく。
「作ることもあるよ。でもやっぱ彼女のほうが上手かな?」
「ふぅん。じゃあ俺もショウちゃん見習って、料理がんばったほうがいいかな?」
「うーん…どうかなぁ」
「でも今、結構がんばったよね!?」
……うん。
こっちのヒヤヒヤ度は半端なかったけどね。
「出来たよー」
「やった。あ、お皿? 出す?」
「あと、箸とか」
そこ入ってるから出して、と言えば、睦月は危なっかしい手付きで、皿やら箸を取り出している。
それだけでこの有様だ。
料理なんて、出来るはずもない。
「うひゃ。いただきまーす。あ、これ、何かすごい形!」
「それ切ったの、むっちゃんだからね」
自分で刻んだ野菜を不器用な箸遣いでつまみ上げ、睦月が笑いながら翔真に見せてくれるが、確かに野菜はすごい形だし、笑っている場合でもない気がする。
「でもおいしいよ。ショウちゃん、すごい!」
「ありがと。でもさ、亮だって、毎日この時間にウチにいるわけじゃないでしょ? 1人のとき、どうしてんの?」
「亮が作っておいてくれたヤツあっためるか、コンビニで買って来るか、ゆっち!」
「え?」
「ゆっちに作ってもらってた。でも今そうするとカズちゃんが怒るから、やめたけど…」
そこに、"自分で作る"という選択肢の入る余地がまったくないところが、睦月らしいといえば、睦月らしい。
「でもね、俺、あっためるくらいは出来るんだよ!」
「え? いや、むっちゃん、だってそれって、レンジにかけるだけでしょ?」
「何分とかさぁ、ちゃんと出来るの」
「あー…そっかぁ、ちゃんと出来るのかぁ」
だから、その"ちゃんと"て何?
自動とか、そんなボタンを押せば、ちょうどいいタイミングで温められるんじゃないの!?
翔真の心の中の突っ込みなど当然気付くはずのない睦月は、おいしそうに頬張っているし、すごく満足そうだから、あえてそれは口に出さないことにした。
「蒼ちゃん、帰って来ないねー」
睦月はクッションの上に、コロリと転がった。
2人が食事を終えて、睦月が出来もしない後片付けを何とか手伝い終えても、同室の蒼一郎はまだ帰って来なかった。聞かなかったけれど、出掛けるときのあの浮かれ具合からして、おそらく郁雅のところへ行ったのだろう。
「ショウちゃーん」
「ん?」
「蒼ちゃん帰って来るまで、ここにいていーい?」
「好きなだけどうぞー。てか、むっちゃん、眠いの?」
「んーん…」
そんなことはないと睦月は首を振るけれど、その目は明らかに眠そうになっている。
よく考えたら、今日は絶叫マシンに15回も乗ったのだ。いくら好きでも、体は疲れるに決まっている。
「その体勢、首痛くない?」
「んー…」
お腹の満たされた疲れた体は、新たな欲求に忠実に従って、寝るには明らかに不向きな体勢にも係わらず、ウトウトと睦月を夢の世界に誘っていく。
「俺、風呂入りに行きたいんだけどなー……て、絶対聞いてないよね」
つい今さっきまで、おぼろげな返事を返していた睦月だったが、とうとうその返事は寝息へと変わっていた。
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6月 離れて歩くずぶ濡れ相合傘。 (6)
2009.03.31 Tue
冷たい雨だと思った。
「あ、傘…」
強い風が、睦月の手から傘を奪った。
お気に入りの傘だったのに。
けれど睦月は、飛ばされ転がっていく傘の行方を、最後まで見届けられなかった。
押し倒されたアスファルトは、日中の暑さをまだ残していて、雨の混じった濡れた感触が気持ち悪かった。
制服の、シャツの前が肌蹴ている。
やめて、と言ったような気がする。
けれど、睦月より少し大きなその手は、それを無視して体中を這い回った。
ベルトに手を掛けられ、ズボンの前を寛げられたとき、足をバタつかせて抵抗したけれど、強い力で頬を叩かれた。
「痛い…」
口の中に感じた血の味は、昔、図工のときにケガをして舐めた血の味とは違う気がした。
頭がガンガンして、耳鳴りがする。
背中が痛い。
掴まれていた手を解放され、伸し掛かっていたいた力が緩んでも、睦月はもう逃げることも出来なかった。
(ゆっち、助けて…!)
あの日。
あのとき睦月を助けてくれたのは、祐介だった。
組み敷く男を突き飛ばし、睦月を救ってくれたのは、祐介だったのに。
――――助けてっ…!!
叫んだはずの声は、どこにも届かなかった。
祐介は、睦月を助けには来なかった。
男の手は、さらに睦月の体を好きなように弄んでいく。
「やっ…いやっ…! ヤダッ…!!」
「睦月! おい!」
強い力に、ガクガクと体を揺さぶられる。
漆黒の闇の底から、睦月の意識が引き摺り上げられる。
「ゆっち…!」
「おい、睦月!」
ハッと目を開けた睦月の視界に広がっていたのは、助けを求めていた祐介ではなくて、深刻そうな表情の亮だった。
「ゆっち…?」
「睦月、大丈夫か? すげぇうなされて…」
「なん…で…?」
「え、何が?」
何で亮がここにいるの?
何でゆっちがいないの?
「あ、傘…」
強い風が、睦月の手から傘を奪った。
お気に入りの傘だったのに。
けれど睦月は、飛ばされ転がっていく傘の行方を、最後まで見届けられなかった。
押し倒されたアスファルトは、日中の暑さをまだ残していて、雨の混じった濡れた感触が気持ち悪かった。
制服の、シャツの前が肌蹴ている。
やめて、と言ったような気がする。
けれど、睦月より少し大きなその手は、それを無視して体中を這い回った。
ベルトに手を掛けられ、ズボンの前を寛げられたとき、足をバタつかせて抵抗したけれど、強い力で頬を叩かれた。
「痛い…」
口の中に感じた血の味は、昔、図工のときにケガをして舐めた血の味とは違う気がした。
頭がガンガンして、耳鳴りがする。
背中が痛い。
掴まれていた手を解放され、伸し掛かっていたいた力が緩んでも、睦月はもう逃げることも出来なかった。
(ゆっち、助けて…!)
あの日。
あのとき睦月を助けてくれたのは、祐介だった。
組み敷く男を突き飛ばし、睦月を救ってくれたのは、祐介だったのに。
――――助けてっ…!!
叫んだはずの声は、どこにも届かなかった。
祐介は、睦月を助けには来なかった。
男の手は、さらに睦月の体を好きなように弄んでいく。
「やっ…いやっ…! ヤダッ…!!」
「睦月! おい!」
強い力に、ガクガクと体を揺さぶられる。
漆黒の闇の底から、睦月の意識が引き摺り上げられる。
「ゆっち…!」
「おい、睦月!」
ハッと目を開けた睦月の視界に広がっていたのは、助けを求めていた祐介ではなくて、深刻そうな表情の亮だった。
「ゆっち…?」
「睦月、大丈夫か? すげぇうなされて…」
「なん…で…?」
「え、何が?」
何で亮がここにいるの?
何でゆっちがいないの?
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