愛じゃない、恋でもない
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- 2011.06.22(水)
- ハイカロリーハニー (前編)
- 2011.06.23(木)
- ハイカロリーハニー (後編)
- 2011.06.24(金)
- お空が泣くから (1)
- 2011.06.25(土)
- お空が泣くから (2)
- 2011.06.26(日)
- お空が泣くから (3)
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ハイカロリーハニー (前編)
2011.06.22 Wed
リオの朝は、結構早い。
それは別段、他の一般家庭に比べてとりわけ早いというわけではないけれど、光彰よりは30分も早く起きて、朝ご飯の支度をしたりする。
ハ イ カ ロ リ ー ハ ニ ー
「光彰ー、起きてー」
朝ご飯の支度が出来たところで、光彰を起こしに行く。まるで母親気分だ。いや、新妻か?
面倒くさいけれど、別に嫌ではない。
「みつあきぃ、ご飯ー」
自分が抜け出た後のベッドに、光彰が掛けぶとんを占領して丸くなっている。
「なぁー」
ユサユサとふとんの上から揺さぶってみても、光彰がまるで起きないから、リオは「起きてー」と、モゾモゾとそのふとんの中に潜り込んだ。
リオの気配を感じてか、光彰がふとんの中で寝返りを打って、その拍子に光彰の膝がリオの背中にぶつかってしまい、リオはべちゃりと光彰の上に倒れ込んだ。
「いだっ…。もー、ミツー!」
いつもだったら、このくらいすれば起きているはずなのに。
「……起きない…」
何だか妙な敗北感を味わいつつ、リオは光彰の腹を跨いで、そのまま上に覆い被さった。
ふとんが暖かくて気持ちいい。
ここで俺まで寝たらダメ…。みつあきのこと、起こさないといけないの。
なのに、リオはふとんの誘惑に負けそうになって、慌てて首を振る。
光彰とくっ付いているから、暖かくて気持ちよくて寝てしまいそうになるんだと、リオは名残惜しく思いながらも、光彰から離れた。
「あ、」
リオが離れるときに、光彰がパジャマ代わりに着ているTシャツの裾が肌蹴て、白い腹が露になってしまった。
何とはなしに、人差し指の先で光彰の腹をつつく。
………プニプニ。
「ふはっ」
楽しくなってきた。
光彰の腹。プニプニしてるから。
back next
たまにはただのラブで。タイトルは約30の嘘さまより。thanks!
それは別段、他の一般家庭に比べてとりわけ早いというわけではないけれど、光彰よりは30分も早く起きて、朝ご飯の支度をしたりする。
ハ イ カ ロ リ ー ハ ニ ー
「光彰ー、起きてー」
朝ご飯の支度が出来たところで、光彰を起こしに行く。まるで母親気分だ。いや、新妻か?
面倒くさいけれど、別に嫌ではない。
「みつあきぃ、ご飯ー」
自分が抜け出た後のベッドに、光彰が掛けぶとんを占領して丸くなっている。
「なぁー」
ユサユサとふとんの上から揺さぶってみても、光彰がまるで起きないから、リオは「起きてー」と、モゾモゾとそのふとんの中に潜り込んだ。
リオの気配を感じてか、光彰がふとんの中で寝返りを打って、その拍子に光彰の膝がリオの背中にぶつかってしまい、リオはべちゃりと光彰の上に倒れ込んだ。
「いだっ…。もー、ミツー!」
いつもだったら、このくらいすれば起きているはずなのに。
「……起きない…」
何だか妙な敗北感を味わいつつ、リオは光彰の腹を跨いで、そのまま上に覆い被さった。
ふとんが暖かくて気持ちいい。
ここで俺まで寝たらダメ…。みつあきのこと、起こさないといけないの。
なのに、リオはふとんの誘惑に負けそうになって、慌てて首を振る。
光彰とくっ付いているから、暖かくて気持ちよくて寝てしまいそうになるんだと、リオは名残惜しく思いながらも、光彰から離れた。
「あ、」
リオが離れるときに、光彰がパジャマ代わりに着ているTシャツの裾が肌蹴て、白い腹が露になってしまった。
何とはなしに、人差し指の先で光彰の腹をつつく。
………プニプニ。
「ふはっ」
楽しくなってきた。
光彰の腹。プニプニしてるから。
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ハイカロリーハニー (後編)
2011.06.23 Thu
リオが光彰を起こすのも忘れて、その白い腹を指でつついたり、手のひらで撫でたりして勝手に楽しんでいると、朝っぱらから尋常でないその感覚に、ようやく意識が浮上してきたのか、光彰が鬱陶しそうに眉を寄せた。
「…………んん……、………………何してんだ……お前…」
薄く目を開くと、リオが何やら楽しそうに人の腹を弄くり回していて。
光彰は一瞬、夢の続きか? とも思ったが、顔を上げたリオが、「あはは、光彰の腹、プニプニしてるー」と無邪気に言ってきたので、やはり現実なのだと悟った。
「お前なぁ、朝っぱらから何、人の腹を……そこは触れたらいけない、パンドラの箱だぞ?」
「だって光彰、起きないからー」
それと、腹を撫で繰り回すのと、一体何の関係があるのか。
だいたい、彼女気取りの女にだって、こんな起こされ方をされたことはない。
「プニプニ」
「しつこいっ!」
「いだっ!」
ベチンとリオのおでこを叩く。
リオは叩かれた額を両手で押さえながら、ベッドを下りた。
「もぉー遅刻するし! 早く起きてー?」
ガバッとふとんを引っぺがされて、光彰は観念してベッドを下りる。
「何でお前、朝からそんな元気なんだ…」
「んんー? 何?」
光彰のぼやきは、寝室を出ようとしていたリオには届いていないらしい。光彰は首を振って、先に行ってろと促す。
ようやく当初の目的を果たしたリオは、ご機嫌で寝室を後にした。
「…………メタボはダメだよな、メタボは…」
着替えようとTシャツを脱いだとき、うっかり鏡の前に立ってしまった光彰は、先ほど散々リオに弄られた自分の腹を、恨めしげに睨み付けた。
*end*
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「…………んん……、………………何してんだ……お前…」
薄く目を開くと、リオが何やら楽しそうに人の腹を弄くり回していて。
光彰は一瞬、夢の続きか? とも思ったが、顔を上げたリオが、「あはは、光彰の腹、プニプニしてるー」と無邪気に言ってきたので、やはり現実なのだと悟った。
「お前なぁ、朝っぱらから何、人の腹を……そこは触れたらいけない、パンドラの箱だぞ?」
「だって光彰、起きないからー」
それと、腹を撫で繰り回すのと、一体何の関係があるのか。
だいたい、彼女気取りの女にだって、こんな起こされ方をされたことはない。
「プニプニ」
「しつこいっ!」
「いだっ!」
ベチンとリオのおでこを叩く。
リオは叩かれた額を両手で押さえながら、ベッドを下りた。
「もぉー遅刻するし! 早く起きてー?」
ガバッとふとんを引っぺがされて、光彰は観念してベッドを下りる。
「何でお前、朝からそんな元気なんだ…」
「んんー? 何?」
光彰のぼやきは、寝室を出ようとしていたリオには届いていないらしい。光彰は首を振って、先に行ってろと促す。
ようやく当初の目的を果たしたリオは、ご機嫌で寝室を後にした。
「…………メタボはダメだよな、メタボは…」
着替えようとTシャツを脱いだとき、うっかり鏡の前に立ってしまった光彰は、先ほど散々リオに弄られた自分の腹を、恨めしげに睨み付けた。
*end*
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お空が泣くから (1)
2011.06.24 Fri
3日連続で天気予報が外れて、今日こそは当たるだろうと信じた今朝の予報は、降水確率10%
なのに、昼を過ぎた辺りで雲が出始め、日が傾くころには雨が当たり始めた。
お 空 が 泣 く か ら
「だから俺の言ったの、信じればよかったのに」
窓を打つ雨粒を見つめながら、リオはそう呟いた。
3日も外したんだから、今日こそは当たると言ったのは光彰で、3日も外したんだから、今日だって外れると言ったのは、リオ。
軍配はリオに上がった。
「バッカだなぁ、光彰」
エアコンも点けずに、勝手にクロゼットから引っ張り出してきた薄手のブランケットに包まっていたリオは、急に思い付いたように起き上がった。
それから、光彰からきつく言われている火の元と戸締りを確認すると、玄関に置いてある傘を2本持ってリオは家を出た。
(お迎えすんの。俺、エライ子だぁ)
光彰の会社は、1度だけその前まで行ったことがある。リオが、『光彰の働いてる会社見たいー』と駄々を捏ねたから、買い物に出たついでに光彰が連れて行ってやったのだ。
光彰の住んでいるマンションからは、電車を乗り換えなしで3駅。
駅の料金表示の看板を見上げながら、リオはポケットの中に入っている小銭を確認する。
(帰りの分が、足らん…)
昨日うっかり、コンビニで買い物をしてしまったせいだ。
夕食の買い物をするときなんかは、お金を預けてもらえるけれど、たいていお釣りは1,000円に満たない程度しかないから、それを取っていても、コンビニでちょっと無駄遣いしたら、リオの手元に残るお金は高が知れてしまう。
でもまぁ帰りは光彰がいるし、そのときに切符を買ってもらえばいいと、とりあえず行きの分だけ切符を買って、リオはちょうどよくやって来た電車に乗り込んだ。
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タイトルは約30の嘘さまから。thanks!
なのに、昼を過ぎた辺りで雲が出始め、日が傾くころには雨が当たり始めた。
お 空 が 泣 く か ら
「だから俺の言ったの、信じればよかったのに」
窓を打つ雨粒を見つめながら、リオはそう呟いた。
3日も外したんだから、今日こそは当たると言ったのは光彰で、3日も外したんだから、今日だって外れると言ったのは、リオ。
軍配はリオに上がった。
「バッカだなぁ、光彰」
エアコンも点けずに、勝手にクロゼットから引っ張り出してきた薄手のブランケットに包まっていたリオは、急に思い付いたように起き上がった。
それから、光彰からきつく言われている火の元と戸締りを確認すると、玄関に置いてある傘を2本持ってリオは家を出た。
(お迎えすんの。俺、エライ子だぁ)
光彰の会社は、1度だけその前まで行ったことがある。リオが、『光彰の働いてる会社見たいー』と駄々を捏ねたから、買い物に出たついでに光彰が連れて行ってやったのだ。
光彰の住んでいるマンションからは、電車を乗り換えなしで3駅。
駅の料金表示の看板を見上げながら、リオはポケットの中に入っている小銭を確認する。
(帰りの分が、足らん…)
昨日うっかり、コンビニで買い物をしてしまったせいだ。
夕食の買い物をするときなんかは、お金を預けてもらえるけれど、たいていお釣りは1,000円に満たない程度しかないから、それを取っていても、コンビニでちょっと無駄遣いしたら、リオの手元に残るお金は高が知れてしまう。
でもまぁ帰りは光彰がいるし、そのときに切符を買ってもらえばいいと、とりあえず行きの分だけ切符を買って、リオはちょうどよくやって来た電車に乗り込んだ。
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タイトルは約30の嘘さまから。thanks!
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お空が泣くから (2)
2011.06.25 Sat
「最悪だ…」
無情にも雨を降らしている空を睨み上げながらぼやいたのは、穂積。
夕方近くなって、雨が降り出したのは分かっていたが、どうせ小雨だろうと高を括っていたのに、外に出てみれば、思いのほか強く降っていた。
これが学生のころなら、傘なんていらない、濡れて帰ればいい、で外に飛び出せたけれど、もう社会人。もういい大人。
出先で突然降り出したというならまだしも、最初から降っているのが分かっているのに、さすがに、傘も差さずに駅まで歩いてはいけない。
とりあえずあそこのコンビニまで走っていって、そこで傘を買って……と、穂積が算段していると、こちらに歩いてくる見覚えのある顔。
「あー穂積だー」
会うのはこれで2度目だというのに、こんなに気安く穂積のことを呼ぶのは、そう、リオしかいない。
自分で差しているほかに傘をもう1本持って、見つけた穂積に手を振る。
人一倍、人見知りの激しい穂積は、まだ完全にリオに心を許せていないけれど、リオは誰に対してもそうなのか、単にそれに気付いていないだけなのか、もうずいぶん昔から知り合いであるかのように、穂積のほうへ駆け寄って来た。
「あれ? 穂積、1人?」
「そうだけど…」
穂積はチラリと、リオの持っている傘に目をやった。
もしかして彼は、光彰を迎えに来たのだろうか。だとしたら、ちょっとマズイ。
「なぁ、その傘…」
「これ? 俺、光彰お迎え。光彰、傘持って行かなかったから」
やっぱり。
穂積は、困ったように眉を下げた。
「どうしたん? 光彰、まだ中? 仕事遅くなる? 俺、ここで待ってたら、邪魔になる?」
「いや、あのな、」
どう告げようか穂積が逡巡していると、リオが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「穂積?」
「あの、いや……ミツ、もう帰っちゃって…」
「へ? 傘ないのに?」
「あー……うん」
別に穂積は、どこも何も1つも悪くないのに、何だか罪悪感を覚えてしまう――――傘を持参していない光彰が、どうやってもう帰ったかを、知っているから。
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無情にも雨を降らしている空を睨み上げながらぼやいたのは、穂積。
夕方近くなって、雨が降り出したのは分かっていたが、どうせ小雨だろうと高を括っていたのに、外に出てみれば、思いのほか強く降っていた。
これが学生のころなら、傘なんていらない、濡れて帰ればいい、で外に飛び出せたけれど、もう社会人。もういい大人。
出先で突然降り出したというならまだしも、最初から降っているのが分かっているのに、さすがに、傘も差さずに駅まで歩いてはいけない。
とりあえずあそこのコンビニまで走っていって、そこで傘を買って……と、穂積が算段していると、こちらに歩いてくる見覚えのある顔。
「あー穂積だー」
会うのはこれで2度目だというのに、こんなに気安く穂積のことを呼ぶのは、そう、リオしかいない。
自分で差しているほかに傘をもう1本持って、見つけた穂積に手を振る。
人一倍、人見知りの激しい穂積は、まだ完全にリオに心を許せていないけれど、リオは誰に対してもそうなのか、単にそれに気付いていないだけなのか、もうずいぶん昔から知り合いであるかのように、穂積のほうへ駆け寄って来た。
「あれ? 穂積、1人?」
「そうだけど…」
穂積はチラリと、リオの持っている傘に目をやった。
もしかして彼は、光彰を迎えに来たのだろうか。だとしたら、ちょっとマズイ。
「なぁ、その傘…」
「これ? 俺、光彰お迎え。光彰、傘持って行かなかったから」
やっぱり。
穂積は、困ったように眉を下げた。
「どうしたん? 光彰、まだ中? 仕事遅くなる? 俺、ここで待ってたら、邪魔になる?」
「いや、あのな、」
どう告げようか穂積が逡巡していると、リオが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「穂積?」
「あの、いや……ミツ、もう帰っちゃって…」
「へ? 傘ないのに?」
「あー……うん」
別に穂積は、どこも何も1つも悪くないのに、何だか罪悪感を覚えてしまう――――傘を持参していない光彰が、どうやってもう帰ったかを、知っているから。
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お空が泣くから (3)
2011.06.26 Sun
「あのな、リオ…、」
「何だー、光彰がいたら、帰りの電車賃、出してもらえるて思ったのに」
「はぇ?」
何でいないの? と絶対に聞かれると思っていた穂積は、まったくそんな素振りを見せようとしないリオに、拍子抜けしたような声を出した。
「ここまで来るのに、電車乗らないとダメなの。でも切符、行きの分しか買えなくて」
「金……足んないのか?」
この間、光彰の家に行ってリオと初めて会ったとき、平然と光彰に『養っている』と言われたことを、穂積は思い出した。
この年の男を『養う』と言うからには、リオはまともに働いてはいないのだろうし、光彰もリオの自由になる金をそんなに多く預けてはいないのだろう。
「帰りは光彰がいるから、切符買ってもらおうと思って」
「あー…」
「でも帰ったんでしょ?」
「帰った、ていうか…」
…何ていうか。
会社は出たけれど、光彰が利用する駅とは反対の方向に行ったはず。
穂積は最後まで見届けたわけではないけれど、帰りしな傘がないと言っていた光彰は、受付係の女の子に『私、傘持ってますから、一緒に帰りませんかー?』とかわいく誘われていたのだ。
その子とは、光彰とは反対方向の駅に向かう自分と帰りに時々一緒になるから、光彰がその誘いに乗っていれば(というか、乗らないはずがない)、向かう先は自分の家ではないわけで。
「じゃあ穂積、この傘使う?」
「え?」
「傘、ないんでしょ? これ、使っていいよ?」
光彰のために持って来たであろう傘を、リオは穂積のほうに差し出した。
「いや……だってこれ、ミツの傘だろ?」
「でも、もう光彰いないんでしょ? だったら穂積、使いなよ。濡れたら大変だよ?」
「ありがと…。でもお前、どうやって帰る気なんだよ。電車代ないんだろ? 貸そっか?」
「ううん、歩いて帰るし」
「歩いて、て…!」
無茶苦茶というか、とんちんかんというか…。
健康のために電車を使わず歩いてます、なんて人は確かによくいるけれど、光彰のマンションまで歩くとなると、ここからはかなりの距離があるし、今日はこの天気だ。
back next
「何だー、光彰がいたら、帰りの電車賃、出してもらえるて思ったのに」
「はぇ?」
何でいないの? と絶対に聞かれると思っていた穂積は、まったくそんな素振りを見せようとしないリオに、拍子抜けしたような声を出した。
「ここまで来るのに、電車乗らないとダメなの。でも切符、行きの分しか買えなくて」
「金……足んないのか?」
この間、光彰の家に行ってリオと初めて会ったとき、平然と光彰に『養っている』と言われたことを、穂積は思い出した。
この年の男を『養う』と言うからには、リオはまともに働いてはいないのだろうし、光彰もリオの自由になる金をそんなに多く預けてはいないのだろう。
「帰りは光彰がいるから、切符買ってもらおうと思って」
「あー…」
「でも帰ったんでしょ?」
「帰った、ていうか…」
…何ていうか。
会社は出たけれど、光彰が利用する駅とは反対の方向に行ったはず。
穂積は最後まで見届けたわけではないけれど、帰りしな傘がないと言っていた光彰は、受付係の女の子に『私、傘持ってますから、一緒に帰りませんかー?』とかわいく誘われていたのだ。
その子とは、光彰とは反対方向の駅に向かう自分と帰りに時々一緒になるから、光彰がその誘いに乗っていれば(というか、乗らないはずがない)、向かう先は自分の家ではないわけで。
「じゃあ穂積、この傘使う?」
「え?」
「傘、ないんでしょ? これ、使っていいよ?」
光彰のために持って来たであろう傘を、リオは穂積のほうに差し出した。
「いや……だってこれ、ミツの傘だろ?」
「でも、もう光彰いないんでしょ? だったら穂積、使いなよ。濡れたら大変だよ?」
「ありがと…。でもお前、どうやって帰る気なんだよ。電車代ないんだろ? 貸そっか?」
「ううん、歩いて帰るし」
「歩いて、て…!」
無茶苦茶というか、とんちんかんというか…。
健康のために電車を使わず歩いてます、なんて人は確かによくいるけれど、光彰のマンションまで歩くとなると、ここからはかなりの距離があるし、今日はこの天気だ。
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